「趣味は何ですか?」
初対面の人との会話や会社の飲み会でこの質問が来るたびに、私は口ごもっていました。話が広がって、ちょっと自慢できるような、格好いい趣味が欲しかったんです。でも、何もありませんでした。
正確に言うと、読書は好きでした。ただ、「趣味は読書です」はなんだか違う気がして、言わなかったことすらあります。結局、口から出るのはこれです。
「特にないですねー」
そして、もじもじしたまま会話が終わります。ちなみに、あのとき何と答えるのが正解だったのかは、今も分かっていません。

趣味、聞かれると困るんですよ。何か始めたいけど、何がいいのか分からなくて。

分からないなら、やってみるしかないな。

でも、始めて続かなかったら、お金も時間も無駄じゃないですか。

だから今回は、続かなくても損しない趣味の始め方を話す。
趣味が続かなくても、気にしなくていい
偉そうに言える立場ではありません。これまでに手を出した趣味を、参考までに並べてみます。
運動した方が良いと思い、仕事終わりにジョギングを始めました。私より先に、膝が音を上げました。
ドライブは、行き先を決めずに運転するのが嫌でやめました。行き先がないのを楽しむのがドライブなのに、行き先がないと落ち着かない。ドライブに一番向いていない性格でした。
登山は夏場の虫が気になるうえに、熊が常に怖い。山を楽しむ以前に、私の頭の中では警戒する仕事が忙しすぎました。
職場の先輩に「趣味にしたら?」と勧められて、デジカメを買ったこともあります。でも、別に撮りたいものがありませんでした。
ガーデニングで育てていた植物は、父親に雑草と一緒に刈られました。
粘土は、道具をそろえたところで終わりました。始まってすらいません。

ギターも若い頃に始めました。趣味を増やしたかったのと、モテそうな気がしたからです。一年くらいは続けましたが、当時は今ほどYouTubeの解説動画もなく、独学の限界を感じてやめました。うまくならなかったんです。誰かに聴かせたことがあるとすれば、弟くらいです。
モテそうだと思って始めた楽器の観客が、弟。ずいぶん身内で完結しました。
それでも、「モテそう」で始めたこと自体が間違いだったとは思いません。興味を持つ入口なんて、その程度でもいい。やってみないうちから、本当に好きかどうかを決めるほうが難しいです。
趣味は、買う前に試着すればいい

ここからが本題だ。
服を買うとき、試着しますよね。合わなければ戻せばいいし、それで誰も責めません。趣味も同じでいいんです。
粘土のときの私は、試着せずにレジへ直行したようなものでした。道具を全部そろえて、それで満足して終わっています。
最初から道具を全部そろえたり、長い契約をしたりしない。
借りられるなら借りる。一回だけ体験できるなら、そこから始める。合わなかったときに、すぐやめられるようにしておくためです。続かなかった趣味は、失敗ではありません。合わないと分かっただけです。

でも、試着ばっかりで何も買わなかったら、結局趣味ゼロじゃないですか。

一回も試着しないよりは、よっぽど進んでる。
人見知りでも始めやすい趣味7選
何から試せばいいか分からない人のために、人見知りの目線で、始めやすい順に並べてみました。下へ行くほど、ハードルが上がります。
ただ、この順番は絶対ではありません。やっていて楽しくて、終わったあとに何か残る。この二つがそろえば、ここにない趣味でも何でもいいんです。人に会えるなら、なお良しです。一人で完結する上の三つに慣れたら、人に会える4位から下も、少しずつ試してみてください。
1位 読書:家でできて、誰とも話さない
1位は、誰でも思いつく読書です。すみません。でも、ハードルの低さでは、これに勝てるものがありません。古本屋や図書館なら、お金をほとんどかけずに試せます。私は新書から入り、そのうちストーリーが欲しくなって小説も読むようになりました。村上春樹や伊坂幸太郎、垣根涼介が好きです。
読書を続けたきっかけの一つは、親のひと言でした。その頃はたしか中学生だったと思います。
「あんた、なんなら知ってるの?」
常識知らずなのは自覚していましたが、なかなかの言い方です。もう期待していない感じがにじんでいます。それを教えるのが、親の役目では? と、今なら思います。
ただ、本を読んでも、会話はうまくなりませんでした。たまに勇気を出して「趣味は読書です」と言ってみたこともありました。「すごい」とは言われます。でも、何を読んだかまで聞かれることは、ほとんどありませんでした。「すごい」という感想が出る時点で、相手もたぶん本を読まない人です。
それでも、本を読んだ休日は、何もしなかったと後悔する日とは違います。
2位 自炊:家でできて、印象もいい
私が料理を始めたのは、三十歳で一人暮らしを始めたときです。最初はカレーとサラダでした。無難です。
自炊なら家でできて、会話にもなりますし、印象もいい。もし好きな人と食べ物の話になっても、「最近カレーを作りました」の一言があれば、「特にないですねー」よりはずっと話が続きます。
3位 サウナ:一人で行けて、黙っていていい
一人で行けて、誰とも話さなくても不自然ではありません。今風で、話題にもしやすいです。ただ、サウナで会話が生まれるかは謎です。私の地元にあるサウナには、だいたいおじさんしかいませんでした。
4位 カラオケ:店に入る度胸だけ要る
一人で出かける練習をしたいなら、カラオケです。私は歌うのが好きで、一人でもカラオケに行っていました。店に入るのには少し度胸が要りますが、部屋に入ってしまえば、選曲も順番も気にせず好きなだけ歌えます。
さらに発声練習にもなります。各地でカラオケオフ会も開かれていて、私も参加したことがあります。最初の自己紹介は緊張しました。でも、歌い始めたら緊張はどこかへ行って、あとは雑談でも何でもできました。歌っている間は、話さなくていいからです。一人で歌えて、声が出るようになって、人にも会える。
カラオケ、良いことづくめです。
普段から歌っている曲があれば、もし好きな人から「今度カラオケ行かない?」と誘われても、一曲目で迷わずに済みます。職場の付き合いや友だちとの集まりなど、カラオケに行く機会は意外とあります。特におすすめの趣味の一つです。

5位 ジム:挨拶くらいは発生する
身体を鍛えながら外へ出るきっかけが欲しいなら、ジムです。私も通っていた時期がありますが、交流は挨拶くらいでした。それで十分です。更衣室で顔を合わせた人に挨拶するくらいなら、人見知りでもハードル低めです。誰とも仲良くならなくても、身体を鍛えるという目的は残ります。
ジムとは少し違いますが、パーソナルトレーニングなら、トレーナーと話す時間があります。仲良くなれば、ほかのお客さんを紹介してもらえる可能性だってあります。ただし、下心は見せないでください。仲良くなってから、恋愛相談をちょっと持ちかけてみるくらいのジャブなら、許されると思います。
まずは見学や一回だけの体験から。いきなり年間契約するのは、粘土の道具一式と同じです。
6位 ボードゲーム:ルールが会話の代わりになる
ボードゲームカフェなら、店によっては、店員さんが一緒に遊ぶ相手を探してくれます。ルールが会話の代わりになるので、話題を考えなくていい。知らない人と遊ぶのでハードルは高めです。ボードゲームカフェに行ったことはありませんが、知らない人とカードゲームをしたことはあります。会話はほとんど要らなかったのに、ちゃんと楽しかったです。
ただし、私の住んでいる地域には、そんな洒落た場所はありませんでした。
7位 料理教室:最難関
近所の料理教室はガラス張りでした。横を通るたびに、中にいる女の子たちを見て「いいなー」と思っていました。
思っていただけで、入ったことはありません。
自炊で包丁に慣れたら、ぜひ7位まで登ってください。昔の私の無念を、晴らしてほしいんです。
「趣味は?」には、最近試したことを答える
「特にないですねー」ともじもじしていた頃の私は、人に言える趣味を探していました。でも、そんな趣味は、試さずに見つかるものではありません。
モテそう、人に聞かれたときに答えたい。そんな動機が混じっていても構いません。ただ、誰かの反応だけを期待すると、反応がなかったときに趣味までつまらなくなります。自分でも少し楽しめそうかは、置き去りにしないほうがいいです。
今の私は、副業が趣味になっています。少しずつ進歩している感覚が楽しいんです。前の記事でも書きましたが、副業は正直みんなやればいいと思っています。それはそれとして、漫画も今も好きです。好きなものを一つに絞る必要はありません。
「趣味は何ですか?」と聞かれたあのときの正解は、今も分かりません。でも、今なら言えることはあります。
答えは、上手にできることでなくていいんです。「最近カレーを作りました」「この前、一人でカラオケに行きました」。最近試したことで十分です。
試した数だけ、「特にないです」以外の答えが増えていきます。

とりあえず、7位の料理教室から行ってみます。

話、聞いてたか?
今日からやること
① 次の休みに行ける図書館か古本屋を、地図アプリで一つ探す
② 帰りにスーパーで、カレーの材料を買う
③ 何か始めたくなっても、今日は道具を買わない


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