美容室で待っていると、雑誌を渡されて「どれがいいか選んでおいてください」と言われることがありますよね。
これが、とても苦手でした。選べと言われても分からないからです。
どの髪型が自分に似合うのか分からないから、美容室に来ています。それなのに、自分で選ぶところへ戻されるとは。
雑誌には格好いい男性が並んでいましたが、私には髪型の見本というより、イケメンを見せられているだけでした。問題は、その髪を私の頭に載せたらどうなるかです。
美容室に行けば、似合う髪型にしてもらえると思っていました。こっちは髪のことなんて分かりません。しかし向こうは、毎日人の髪を切っているプロ。私の顔や頭を見れば、「この人はこうしたら格好よくなる」と分かるんじゃないか。
ネットで「本当に腕のいい美容師は、オーダー以上の髪型にしてくれる」と読んだこともあり、運命の美容師を探して、約五千円の美容室を四軒ほど回りました。
最後に落ち着いたのは、千円カットで二週間おきにちょっとだけ切る、という方法でした。

美容室って、何をどう頼めばいいか分からないんですよ。結局「いつもどおりで」って言っちゃいます。

「いつもどおり」から、いつもと違う結果を待ってたんだな。

でも、似合うものが分からないから、プロに相談したいんですよ。

それは頼っていい。今回は、相談する材料と、相談できる相手の選び方を話す。
「切りすぎないで」だけでは足りない
当時の注文を、正確には覚えていません。ただ、「おまかせ」と言っていたわけではないと思います。「前髪を切りすぎないで」「刈り上げないで」などと注文していたはずです。
こうなりたい、という完成形はありませんでした。ただ、嫌な仕上がりを伝えるのも注文の一つです。そのうえで、「似合うものが分からないので提案してほしい」とまで話せていませんでした。
ある美容室では、切り終わったあとに「サービスでエアリーなんとかカットをやりました!!」と、笑顔で言われたことがあります。
ありがたかった記憶はありますが、名前は忘れました。エアリーの先が何だったのか、思い出せない確信があります。そして当時も、何が変わったのか分かりませんでした。
エアリーになったらしい。私の理解だけが置き去りです。
お金を払うたびに、似合う髪型へ近づいた実感があればよかったのですが、その手応えはありませんでした。「この店でもなかったか」と、また別の美容室へ行く。肝心の「何をもって似合うとするか」は、自分でも分かっていないのにです。

「できない」と言われたら、理由を聞く
四軒のうち、一軒には長く通いました。腕がよかったからではありません。同僚に勧められて、なんとなく行かないといけない雰囲気になったからです。髪を切る店を選んでいるのに、同僚との関係まで少し絡んできます。
一度、その店でツーブロックにしてほしいと頼んだことがあります。当時はとても流行っていたので。返ってきたのは、「その長さではできない」という言葉でした。
こちらはツーブロックをやったことがありません。「本当に?」とは思いましたが、言い返せる知識はない。結局、「じゃあ、いつもどおりで」と頼みました。やってみたかった髪型が、一度の会話で候補から消えました。
それなら髪を伸ばして、もう一度頼めばよかった。でも、伸ばしたいとも思いませんでした。というか、できなかったと言うべきですね。
髪にボリュームがなく、伸ばすとてっぺんがぺたんこになってしまうのです。分かる人なら、首がもげるほど頷いて共感してくれることでしょう。
この悩みを、美容師に相談したことはありません。「じゃあサイドを短くしましょう」と爽やかに言われるだろうと思っていました。実際にそう言われたわけではありません。
私が先に、返事を決めていたんです。
私の、よくない癖が出ました。
変わらない頭に安心しても、何も始まらない
美容室を回っても、気に入る髪型には出会えませんでした。それで、「意味ないな。千円でいいわ」となりました。
千円カットでは、二週間ごとに五ミリほど切ってもらっていました。「サイドは短く、上は気持ち長めに」くらいは言っていました。五ミリしか切っていないので、ほとんど変化はありません。
でも、それがよかった。髪型が変わったと周りに気づかれて、いじられるのが面倒だったからです。このころの話は、「おしゃれが苦手な男へ。最初は靴一足と店員任せでOK」でも書いています。
格好よくなりたくて美容室を探していたはずなのに、変わらないことに安心する。面倒な客ですが、当時の私は本当にそうでした。似合う髪型を探す気持ちと、変わったことを目立たせたくない気持ちが、同じ頭に入っていたんです。
美容室の選び方は、この5つの順で

次は、どこで切るかだな。
職場に、いつもおしゃれな髪をしている「おしゃれ番長」がいます。どうやって美容室を選んでいるのか聞いてみると、「安くて、こっちの希望どおりにしてくれる店」とのこと。高い店のほうが安心じゃないのかと聞くと、こう返ってきました。
「高くて腕がいいのは、当たり前だから」
だから番長は、安くて、希望どおりにしてくれる店を探しているそうです。
それに、番長はなりたい髪型を選べる人です。当時の私は、何が似合うか分からない人でした。同じ基準を、そのまま借りることはできません。私なら、予算に加えて、悩みを聞いてくれるか、できない理由や別の案を説明してくれるかも見たいです。
では、どの店に入るか。私なら、この順で決めます。
迷ったら、この順で決める
① ネット予約ができる(電話しなくていい)
② 予算内に収まる
③ メンズの髪型の写真を載せている美容師がいる
④ 口コミに「話を聞いてくれた」「説明してくれた」と書かれている
⑤ 全部そろう店が複数あったら、通いやすい方にする
初回は、仕上がりに加えて、相談しやすかったかを振り返ってみてください。それで合わないと感じたら、紹介された店でも通い続けなくていいと思います。
頼み方は、写真一枚と困りごと一つ
番長は、店でなりたい髪型の写真を見せていました。冒頭の雑誌と同じじゃないか、と思うかもしれません。たしかに、家でゆっくり選んでも、自分に似合うか分からない問題は残ります。
だから、似合う正解を一枚当てようとしなくていいんです。「この前髪は好き」「このくらいの短さなら試したい」。一部分でも気になる写真を、話を始める材料として持っていきます。
自分の頭に載せたらどうなるか想像できない、という私の悩みも、今ならAIで少し解消できます。GeminiやChatGPTに自分の顔写真を送って、「この髪型にしてみて」と頼めば、それらしい画像を作ってくれます。
自分の顔写真をAIに送るのは、最初は少し恥ずかしいかもしれません。でも、相手はAIです。笑いません。髪の量やくせまでは再現されないので、あくまで材料の一つです。
ただ、写真だけでは足りないこともあります。私のてっぺんのように、写真どおりにはいかない頭もあるからです。
あの頃の私に必要だったのは、相談する材料と、それを一緒に考えてくれる相手でした。
完成した髪型の名前を知らなくても、自分が困ることなら言えます。「くせで横に広がる」「大きく変えるのは怖い」。写真を一枚と、困りごとを一つ。これで相談を始められます。
「似合うか分からないので、この写真のどこなら取り入れられそうですか」と聞いてみる。髪の量やくせ、普段の手入れも含めて、そこから一緒に考えてもらえばいいと思います。

正解を持たずに、美容室へ行っていい
ちなみに今は、髪が限界を超えて薄くなってきたので、自分でバリカンを使って丸坊主にしています。最後にいい美容師と出会い、最高の髪型が見つかった。そんな結末ではありません。
量も長さもなく、今は選べる髪型がほとんどありません。
運命の美容師は最後まで現れず、自分が担当になりました。なので、髪型探しに成功した人の話としては書けません。今回は、分からないままプロに期待して、聞けないまま引き下がった人の話です。
髪型ひとつで恋愛が始まるとは言いません。ただ、恋愛対象に入るかどうかは、話す前の見た目で決まってしまう部分もあります。「いつもどおりで」から一歩出るのは、その準備です。
それに、自分の希望を言葉にして、分からないことを聞く経験は、髪型以外の場面でも残ります。
美容師は占い師ではありません。似合う髪型が分からなくても、相談していい。正解を用意してから店に行く必要はありません。

写真、百枚くらい保存しておきます。

それはもう、占いの資料だな。
今日からやること
① ホットペッパーで、自分の髪の長さに近い男性の写真を一枚保存する
② 「くせで広がる」「刈り上げは嫌」など、自分の頭の困りごとを一つメモする
③ 雑誌を渡されたら、イケメンではなく髪だけを見る


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